日勤中、興奮した患者さんに突然、腕を強くつかまれた。
必死に対応したけれど、心臓はずっと速く動いたままだった。
先輩に伝えると、「こういうことはあるよ」と言われて、その場は終わった。
でも、帰宅してからも、患者さんが手を振り上げた瞬間が、何度も頭に浮かんでくる。
「また明日も、同じことが起きたらどうしよう」
そう考えると眠れなくて、布団の中でスマホを開いた。
「みんな平気なのかな」 「私だけ、こんなに怖がっているのかな」
患者さんに近づくことさえ怖くなってしまった自分を、責め続けてはいませんか。
患者さんに近づくだけで体がこわばるのは、甘えでも弱さでもありません。
この記事では、その恐怖の正体を整理しながら、安心して働くために自分を守る方法を一緒に考えていきます。
患者さんからの暴力が怖くなったあなたへ…その恐怖は自然な反応です
「これくらいで怖がるなんて」
そう自分を責めていませんか。 でも、その恐怖は、決しておかしなものではありません。
暴力を受けたあと怖くなるのは当たり前
一度、暴力的な場面を経験すると、体と心は「また同じことが起きるかもしれない」と警戒するようになります。
これは、危険から自分を守るための、ごく自然な反応です。
腕をつかまれた強さ、あの時の表情、周りの空気。 そうした記憶が残っている限り、次に似た状況になれば体が緊張するのは当たり前のことです。
「慣れないといけない」ものではなく、「危険をきちんと感じ取れている」証拠でもあります。
「また暴力を振るわれるかも」と思ってしまう自分を責めなくていい
「またあんなことがあったらどうしよう」
そう考えてしまう自分を、「弱い」と決めつけていませんか。
一度怖い思いをしたのに、次の勤務でも同じ場面を想像してしまうのは、ごく自然なことです。
先輩から「こういうことはあるよ」と言われても、その場ではうなずくしかなかった。 でも本当は、まだ全然大丈夫じゃなかった。
その気持ちを、否定する必要はありません。
患者さんを見るだけで体がこわばる理由
一度の出来事のはずなのに、なぜ毎日の勤務にまで影響してしまうのか。 そこには、ちゃんとした理由があります。
暴力を思い出すたび心も体も警戒してしまう
暴力を受けた経験があると、それ以降、患者さんに近づくだけで体がこわばるようになることがあります。
手を伸ばされるだけで、びくっとしてしまう。 声を荒げられただけで、身構えてしまう。
これは、心と体が「また危険が起きるかもしれない」と、常に警戒態勢を取っているからです。
看護をしたい気持ちは、今も変わっていないはずです。 それでも体が緊張してしまうのは、暴力という経験が、それだけ大きな衝撃だったということです。
患者さんへ近づくのが怖いのは弱いからではない
「みんな平気そうにしているのに、私だけ怖がっている」
そう感じて、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。
でも、周りが平気に見えるのは、本当に平気だからとは限りません。 表に出さないようにしているだけかもしれません。
暴力を怖いと感じる感覚は、看護師としての適性とは関係ありません。 むしろ、危険を正しく危険だと認識できているということです。
怖いと感じるのに、また同じ病棟へ向かわなければならない。
その現実が続くだけでも、心は少しずつ疲れていきます。
それでも「辞める」という選択をすぐに取れないからこそ、苦しさはさらに大きくなってしまうのです。
患者さんからの暴力だけでなく、職場全体の人間関係にも疲れ切ってしまっている人は、こちらの記事も参考になります。
→ 看護師の人間関係に疲れた…毎日耐えることしかできないあなたへ
怖いのに辞められない理由
「怖い」と感じているのに、なぜか動けない。 それには、ちゃんとした理由があります。
「患者さんだから仕方ない」と我慢してしまう
「病気のせいだから」 「認知症だから、仕方ない」
そう自分に言い聞かせて、恐怖を飲み込もうとしていませんか。
たしかに、患者さんの症状が影響していることもあります。 でも、それと、あなたが怖い思いをしていいことは、まったく別の話です。
理由があるからといって、恐怖を感じてはいけないわけではありません。
人手不足や罪悪感が退職を言えなくしている
「私が辞めたら、他の人にもっと負担がかかる」
そう考えて、動けなくなってしまう人は少なくありません。
「自分が我慢すればいい」と罪悪感を抱え、限界でも辞められなくなっている人は、こちらの記事も参考になります。
→ 看護師は罪悪感で辞められない…「私が我慢すればいい」と思って限界を迎えているあなたへ
ぎりぎりの人数で回している病棟であればあるほど、その罪悪感は大きくなります。
でも、恐怖を抱えながら働き続けることでしか成り立たない状況だとしたら、それは本来、あなた一人が背負うべき問題ではありません。
暴力への恐怖を抱え続けるとどうなるのか
「そのうち慣れるはず」と思って耐え続けている人ほど、知っておいてほしいことがあります。
恐怖を抱えたままでは心も体も限界に近づく
恐怖を感じながらも、それを表に出さずに我慢し続けると、心は少しずつ消耗していきます。
患者さんに近づくたびに緊張する。 勤務中、常に気を張っている。
その積み重ねは、確実に心の余力を奪っていきます。
「これくらい大丈夫」と思い込んでいるうちに、気づけば限界に近づいていることもあります。
看護が嫌いになる前に自分を守ってほしい
本当は、患者さんと向き合う仕事が嫌いなわけではないはずです。
それなのに、恐怖を我慢し続けた結果、看護そのものがつらく感じられるようになってしまうことがあります。
好きだった仕事を、嫌いになってしまう前に。 一度、自分の恐怖と向き合い、環境を見直すことを考えてもいいはずです。
「このまま看護師を続けられないかもしれない」と感じるほど心が疲れている人は、こちらの記事も参考になります。
→ 看護師を辞めた後が不安…「辞めたいのに動けない」あなたへ
自分を守ることは、看護から逃げることではありません。
暴力への恐怖から自分を守るために選べる3つの方法
「辞める」か「我慢する」かの二択だと思っていませんか。 実際には、その間にもいくつかの選択肢があります。
今の職場に残る場合
- メリット:慣れた人間関係や勤務条件を維持できる
- デメリット:暴力のリスクがある環境自体は変わらない可能性が高い
- 向いている人:病棟の対応体制やチームのフォローに一定の安心感がある人
部署異動・働き方変更をする場合
- メリット:暴力のリスクが比較的低い部署に移れる可能性がある
- デメリット:異動先の環境や人間関係は、実際に配属されるまで分からない
- 向いている人:今の病院自体には大きな不満がなく、リスクの少ない部署で働きたい人
環境を変える場合
- メリット:暴力対応の体制が整った職場を、あらためて選び直せる
- デメリット:新しい環境に慣れるまで、一定の負担がかかる
- 向いている人:恐怖による心身への影響がすでに強く出ている人、今の職場に戻ることを考えるだけでつらい人
安心して働ける職場が、本当にあるのか知りたいあなたへ
「もう暴力に怯えながら働きたくない」 そう思う気持ちは、決しておかしなものではありません。
暴力対応の体制が整っている職場、リスクの少ない部署で働いている看護師は、実際にいます。 求人の情報や職場の対応体制を、比較するだけでも見えてくるものがあります。
今すぐ転職しなくても大丈夫です。 でも、安心して働ける職場があることを知るだけでも、不安は少し軽くなります。
まとめ
怖いと思う気持ちは間違っていない
暴力を経験して怖いと感じるのは、自然な反応です。
「また振るわれるかもしれない」と怯えてしまう気持ちは、あなたが弱いからではありません。
その気持ちを、まず自分自身が認めてあげてください。
安心して働ける環境を知ることから始めよう
自分を守ることは、逃げることではありません。
安心して患者さんと向き合える環境は、探せば見つかります。
今すぐ答えを出さなくても大丈夫です。 まずは、安心して働ける職場があることを知ることから、始めてみてください。

