日勤が終わった帰り際。
師長から声をかけられる。
「来月も人が足りないから、協力お願いね」
その言葉が、帰り道もずっと頭に残る。
今日、また別の同僚が辞めると聞いた。
「今のタイミングで辞めるなんて、絶対に言えない」
胸の奥がずっと苦しい。
本当は、自分も限界に近い。
でも、言えない。
言ったら、病棟が回らなくなる気がして。
迷惑をかける気がして。
「裏切った」と思われる気がして。
だから今日も我慢する。
そう決めて、スマホで「看護師 人手不足 辞められない」と検索したのではないでしょうか。
ここに来たということは、もう十分すぎるほど我慢してきたということだと思います。
この記事では、その苦しさを一緒に整理していきます。
人手不足だから辞められないと思ってしまうのはあなただけではありません
「私が辞めたら、病棟が回らなくなる」
そう思って、限界を感じていても動けなくなることがあります。
責任感が強い人ほど、この罪悪感は大きくなります。
そして、責任感が強い人ほど、自分を後回しにしてしまいます。
私が辞めたら迷惑をかけると思ってしまう
退職者が続いて、残った人の負担が増えている。
その状況を、自分も分かっている。
だから「今は辞めるタイミングじゃない」と思ってしまう。
でも、そのタイミングはいつまで経っても来ない。
人手不足は今に始まったことではなく、次に誰かが辞めてもまた同じことが繰り返される。
「迷惑をかける」という気持ちは、本物の優しさから来ています。
でも、その優しさを周囲に向けるあまり、自分のつらさまで後回しにし続けていいのか、一度考えてみてほしいのです。
「私が我慢すればいい」と罪悪感を抱えている人は、こちらの記事も参考になります。
→ 看護師は罪悪感で辞められない…「私が我慢すればいい」と思って限界を迎えているあなたへ
限界を感じても自分を後回しにしてしまう
ナースコールが鳴り続ける中で、休憩も取れない。
申し送りは毎日時間外になる。
それでも「仕方ない」と思って、続けてきた。
責任感が強い人ほど、自分のつらさよりも職場への影響を優先し、我慢を続けてしまうことがあります。
「私だけが特別に弱いわけじゃない」と、まず知っておいてください。
「私だけじゃなかった。」
そう思えたなら、それだけでも少し肩の力が抜けるかもしれません。
では次に、その苦しさの正体を一緒に整理してみましょう。
人手不足だから辞められないと思う気持ちを整理してみましょう
辞められない理由を、一度分けて考えてみましょう。
感情からきているものと、現実的な問題からきているものを、混ぜたまま考えていると、ずっと出口が見えなくなります。
責任感と罪悪感は同じではありません
「迷惑をかけたくない」
その気持ちは責任感です。
でも、
「辞めたら裏切り者になる」
そこまで自分を責める必要は、本当にあるでしょうか。
まだ退職を伝えていない段階から、
「迷惑をかける」「裏切ることになる」と自分を責めていないでしょうか。
その罪悪感は、実際に起きたことではなく、これから周囲にどう思われるかという不安から大きくなっているのかもしれません。
なのに、すでに罪悪感を抱えているとしたら、それは少し重すぎる荷物かもしれません。
本当に背負うべき責任なのか考えてみる
病棟の人手不足は、あなた一人が作り出した問題ではありません。
それらは、組織が考えるべきことです。
あなたが在籍し続けることで、その問題が一時的に見えにくくなっているだけかもしれません。
「私がいなければ病棟が回らない」と感じるほど、責任を抱え込んでいるのかもしれません。
ただ、人員配置や採用、退職者への対応まで、あなた一人が背負う必要はありません。
人手不足でも辞められない本当の理由とは
「人手不足だから辞められない」と言葉では思っていても、その奥にある本当の理由は別のところにあることが多いです。
「裏切り者」と思われるのが怖い
退職を伝えた瞬間、「この忙しい時期に辞めるの?」と言われるかもしれない。
その場面を想像するだけで、言葉が出てこなくなる。
でもこれは、辞める理由が間違っているからではありません。
その言葉を言われることへの恐怖が、先に立っているだけです。
怖いのは当然です。
ただ、その一言が怖くて、自分の限界を見過ごし続けることが、本当に正しいかどうかは別の問題です。
師長に言い出せない理由は勇気だけではありません
師長はいつも忙しそうで、声をかけるタイミングが見つからない。
「今じゃない」と思っているうちに、また日が過ぎていく。
これは、あなたに勇気が足りないからではありません。
退職を言い出しにくい空気が、職場そのものに漂っているからです。
言い出せない環境を作っているのは、あなたではありません。
師長に退職を伝えたいのに、今日も何も言えなかった人は、こちらの記事も参考になります。
→ 看護師で退職を言い出せない…今日も何も言えなかったあなたへ
人手不足は個人ではなく組織の課題です
あなたの病棟だけではありません。看護師の人員確保はあなた一人が背負う問題ではありません。
一人の看護師が退職したことで病棟が回らなくなるなら、それは組織の体制に問題があります。
あなたが背負い続けることで、その問題は解決されません。
あなたが無理を重ねて働き続けても、人手不足そのものが解決するわけではありません。
まずは、自分の心や体の負担を後回しにしないことが大切です。
このまま我慢を続けることで失うもの
「もう少しだけ」
そう思って続けてきたことが、気づけば何年にもなっていることがあります。
我慢が続くほど心も体も疲れていく
夜勤明けに、何もやる気が出ない。
休みの日なのに、仕事のことが頭から離れない。
好きだったことを楽しめなくなっている。
こうした状態が続いているなら、心や体に負担がかかっているのかもしれません。
「まだ大丈夫」と決めつけず、自分の状態を一度振り返ってみてください。
心や体がつらさを感じていても、頭の中の「辞めたら迷惑」という声によって、その負担を後回しにしてしまうことがあります。
「みんなも大変だから」と自分のしんどさを後回しにしている人は、こちらの記事も参考になります。
→ 急性期がしんどい…「みんなも同じ」と我慢し続けている看護師さんへ
選択肢を知らないまま我慢し続けないために
職場によって、人員体制や夜勤回数、休憩の取りやすさには違いがあります。
今の職場とは異なる働き方ができる求人もあるため、まずは条件を比べてみることが大切です。
それを知らないまま我慢を続けることは、別の選択肢がないと思い込んだまま走り続けることと同じです。
知るだけなら、今日できます。
人手不足だから辞められないと感じたときの選択肢
今の病院しか知らないままだと、
「どこへ行っても同じかもしれない」
そう思い続けてしまいます。
でも実際は、夜勤の回数も、人員体制も、病院によって大きく違います。
知るだけなら、今すぐでもできます。
今の職場に残る場合
今の職場に残るなら、まず夜勤回数や業務負担について、相談できる環境があるかどうかを確認してみましょう。
相談できる先輩や、産業医が機能している職場なら、改善できる余地があるかもしれません。
ただし、「言い出せない空気がある」「相談しても変わらない」という職場では、この選択肢は機能しにくい面もあります。
向いている人は、まだ職場への信頼が残っていて、改善の余地があると感じられる人です。
部署異動・働き方変更をする場合
今の病院の中で、夜勤が少ない部署へ異動する方法もあります。
外来、手術室、内視鏡室など、急性期病棟より夜勤負担の少ない部署があることもあります。
転職よりも心理的なハードルが低く、奨学金の縛りがある場合でも動きやすい選択肢です。
ただし、希望が通るかどうかは職場の状況によって異なります。
環境を変える場合
クリニックや施設などには、夜勤がない求人や、夜勤回数の少ない求人が見つかることもあります。
人員体制や休憩の取りやすさが今の職場とは異なる職場もあります。
急性期病棟で働いていると想像しにくいかもしれませんが、求人を比べることで、勤務条件や働き方の違いを確認できます。
「今すぐ転職する」ではなく、「そういう職場があるのかどうかを知る」だけでも、今の苦しさが少し変わることがあります。
「私が我慢しなくても回る職場なんて、本当にあるのかな。」
そんな答え合わせをするつもりで見るだけでも構いません。
今すぐ転職を決める必要はありません。
まずは、人員体制や働き方が違う職場があることを知ることから始めてみませんか。
人手不足だから辞められないと思ったら思い出してほしいこと
あなた一人が病棟を支える必要はありません
人手不足は、あなたが作った問題ではありません。
あなたが我慢し続けることで、一時的に問題が見えにくくなっているだけです。
組織が解決すべき課題を、一人の看護師が身を削って補い続けることは、誰のためにもなりません。
周囲を優先するあまり、自分のつらさまで後回しにし続ける必要はありません。
選択肢を知ることは逃げではありません
「辞める」と決めることと、「他の働き方を知ること」は、別のことです。
求人を見ることは、今の職場を裏切ることでも、逃げることでもありません。
自分がどんな働き方を求めているのかを確認する、ただそれだけのことです。
今日よりも少し楽に働ける場所があると知るだけで、明日の気持ちが少し軽くなることもあります。
「知っておく」だけで、十分です。

